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芋虫ブログ

当分は映画感想がメインの予定。基本的に、面白かった作品・好きな作品のみ扱います。

【映画感想5】 『拝啓天皇陛下様』 ――史上最も優しい軍隊批判映画

 

 

拝啓天皇陛下様 [DVD]

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【公開年】1963年,日本
【視聴時】2015年
【レビュー執筆時】2015年

 

■あらすじ  ※「キネマ旬報社」データベースより
砂の器』の名匠・野村芳太郎監督が渥美清の主演で贈る、哀感溢れる軍隊喜劇。幼い頃に両親と死別した山田正助にとって、3度の食事ばかりか俸給まで貰える軍隊はまさに天国。戦争集結の噂を聞いた正助は、軍隊から放り出されまいと天皇へ手紙を書く。

 

 

 

■この映画を観た理由
上記のあらすじ文に惹かれて。

 


■感想

とても面白かった。

 

まずこの映画の魅力は、主人公の純朴さにある。

渥美清(『男はつらいよ』の寅さんの人)演じる主人公は、学がなくで粗暴な所もあるが、純真でどこか憎めない男だ。
軍隊生活も楽しめてしまう彼を見ているだけで、思わず笑ってしまう。

 

その上で、彼の純朴さを用いて、軍国主義に対する皮肉が描かれている。

彼が作中でどれだけ「軍隊は天国だ」と言っても、それを額面通りに受け取る視聴者は一人も居ない。
軍隊が地獄である事など誰でも知っている。それ故に、彼の境遇と、人を洗脳する軍国主義の恐ろしさが浮き彫りになる。

 

この映画において、ほとんどの軍人(日本人)は「洗脳」されていない。
戦場で死ぬときに「天皇万歳!」などと言う軍人は居ない。これが当時の日本の現実だろう。

しかし主人公は違う。本当に天皇を神だと信じており、神のために死ぬことも厭わない。
結局彼は戦場から生きて帰るが、その後も天皇を神として崇める。

 

純朴な彼は、よく笑い、人を笑わせる。
彼は幸せだろうか?

「もちろんだ!」と本人は言うだろう。

しかし僕らにはそうは思えない。

こうした気持ちを起こさせることで、軍隊が、当時の日本がいかに哀しいものか、とても優しく描かれている。


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それ以外の部分にも魅力がたくさんあることを伝えておこう。

 

まずは登場人物。主人公だけでなく、少しイジワルな上長、糞真面目で厳格な上長、お調子者で愛妻家の同期。誰も彼も人間味に溢れている。そして彼らが、軍隊という恐ろしい環境にありながらも、主人公に心を打ち解けていく様は素直に楽しい。

 

あとは映像的美しさ。

戦場も、戦後の町並みも、リアルで圧巻。
そして冒頭のシーンも絵的に素晴らしい。そしてラストシーンはそれにも増して素晴らしい。

最後の悲哀とユーモアに包まれた一文は必見。


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あえて一言でまとめると、全体的に完成度が高い映画、だ。

ちゃんと作って、ちゃんと良いものが出来た、という印象。

後日、古本屋で原作本を探して買ってしまった。それくらいお気に入りの映画になった。