芋虫ブログ

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【映画感想1】 『ベイマックス』 ――3Dアクションはまだまだ進歩する

 

  

■この映画を観た理由
とても評判がよく、CMも面白そうだったので。
ディズニーの映画が好きなので。

 

■あらすじ
天才理系少年・ヒロは、理系大学生の兄が作ったケアロボット"ベイマックス"に感銘を受け、兄と同じ大学の飛び級入学を決意する。
そして入学がかかったロボット発表会で大成功を収めるが、直後、会場は原因不明の大火災が発生。兄は死亡する。
生きる気力を失い引きこもるヒロ。しかし兄の遺した"ベイマックス"に勇気づけられ、ベイマックスや兄の同期たちと共に事件の真相に迫っていく。

 

 

 【公開年】2014年,アメリカ
【視聴時】2015年
【レビュー執筆時】2015年

  


■感想

手堅く面白かった。
一番の見所は作画。よく動く3Dアニメは見ていて楽しい。
3Dアニメって本当に何処までいくんだろう? まだまだ進歩が期待できる。

 

ストーリーは特に新規性はないけれど、別にそれは問題ではない。ディズニーのこの手の作品に、新しさを求めている人はそう居ない。
序盤に提示される魅力的な世界観、物語上の謎、挿入されるコメディ、意外な(?)犯人、爽快なラスト。それで十分なのだ。そしてこれらを手堅くまとめる術を、今のディズニーは持っている。そういうことだ。満足できる映画。

 

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ディズニーの仕事の細かさの話。

 

舞台は日本をモチーフにした街なのだが、これが嫌味がなく仕上がっているのが地味に凄い。
外国人の作った日本というのは基本的に過剰でズレているのだけれど、本作の日本は確かに日本らしいし、しかし実際以上に面白い。

これは調べて分かったことだけれど、ベイマックスの顔が日本の鈴をイメージしたものであったり、そもそも「テクノロジーを敵と見なさない」という発想自体が日本的なものらしい*1

こういう部分のリサーチや作り込みの細かさも、流石はディズニーだ。

 

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公開当時、少しだけ話題になっていたのが、『心温まる物語』というような宣伝と、アクションシーン満載の本編とのギャップだった。

確かにそれは感じるかもしれない。ベイマックスとヒロが抱き合っているパッケージからは、火器やカラテで戦い合う映画には見えないだろう。これはおそらく意図的な販売戦略だ。

 

しかし僕はこれが悪質だとは思わないし、詐欺だとも思わない。

というのは、本作が『心温まる物語』であることに変わりはないからだ。
テーマは兄弟愛、人を許す心である。
3Dのアクションシーンに目が行きがちだが、そのテーマはブレていない。だから詐欺ではないし、真摯な映画だと思う。

(余談だけれど、シュガーラッシュはその意味でブレていたと思う。『敵役の悲哀』みたいなものが後半は描かれていなかった)


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そういえばこの映画には恋愛が描かれていない。
これは最近のディズニーの風潮で、『シュガー・ラッシュ』『アナと雪の女王』『ベイマックス』と、どれも恋愛要素が希薄だ。

主題が恋愛じゃなくても面白く作れる(と気付いた)というのは素直に良いことだと思う。
特に今回は、ベイマックスという強烈なキャラクターと魅力がある。ここに別の要素を加えるとややこしくなるので、良い選択だと思う。

 

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多少苦言を呈するとすれば、「意外な犯人」が最初から丸分かりなことと、終盤のご都合主義的なハッピーエンドが目につくくらいか。
良くも悪くも予定調和なストーリーは、前述のようにディズニー映画なら許容すべきことなのかもしれない。

 

とはいえ、『アナと雪の女王』で恋愛要素を手放したり、『魔法にかけられて』で運命の愛を手放したり、意外と冒険をするというのもディズニー映画の傾向だ。
今後またそういう映画も観てみたい。

 

 

*1:言われてみれば、鉄腕アトムドラえもんも科学を正義として描いている